シラフから逃げるな
酒が好きだ。隙あらば飲んでいる。
ただ、酒の味をたしなむと言うよりも、酔っ払って頭をグズグズにしたいから飲んでいる部分が大きい。だから、全国の地酒や、知る人ぞ知るワインを楽しんだりするような飲み方ではなく、ロング缶を数本買ってきてつまみもなしにグイグイ空けるといういい加減なスタイルである。
最近のお気に入りは、Twitterで見かけた「本麒麟に氷入れて飲むとホッピーの味がする」という飲み方だ。本当にいい感じのホッピーっぽくなり美味い。大変貧乏くさいが。
週に3,4日はこんな飲み方をしているし、下手したら休肝日は一週間に1日しかつくらない時もある。幸い健康診断で肝臓の数値が悪くはないものの、さすがにこんな生活を続けていたら待っているのは苦しい死しかない。ということで最近は多少休肝日を増やしているが、飲み方自体は相変わらずいい加減なスタイルだ。
コロナの影響で最近は減ったが、外に飲みに行くのも好きだ。ただ、飲みに行きにくくなった分、たまに居酒屋に行くとついはしゃぎすぎてしまう。要はブラックアウトに至ることも少なくない。もういい年になってきているので、そろそろ大人な飲み方を身体に覚えさせるべきではないか。
20歳前後の頃、友人たちと「ちょい飲み部」というものをつくった。その名の通りちょっとだけ飲んで店を出る活動で、4,5人で店に入って1人飲み物を1杯、おつまみを1,2品だけ頼み、平らげたら即会計。金がないなりにも酒場の雰囲気を感じたいという思いから生まれた部であった。とはいえ、内蔵も綺麗で無軌道な若者たちがその程度の量の酒と食べ物満足できるわけもなく、結局数回で辞めてしまったが、ガッと店に入ってパッと飲み食いしてサッと出てくるスピード感のある飲み会はイベントのような趣もあり楽しかった。
ちょい飲み部は店側からすれば利益率が低い厄介な客だろうが、中年に差し掛かりながらもいい加減な飲み方ばかりしている今こそ、若かりし頃の精神を思い出すべきではなかろうか、という気持ちになる。
1人で居酒屋に入り、少しのつまみと数杯の酒を飲む。周囲とは無理にコミュニケーションは取らないが、声を掛けられたら粋な応対をする。
土山しげる×久住昌之の『荒野のグルメ』の世界観だ。
『荒野のグルメ』の主人公は、決してカッコいいおじさんではなかったが厭味な様子もなく、1人ただ酒を楽しんでいる様子でよかった。シラフから逃げるのではなく、”結果として”酔う。ああなりたい。
よし。今年の目標は「シラフから逃げない」にしよう。
という文章を書くまでにロング缶を2本空けてしまった。
本当にいい加減だ。